Medal of Honor: Airborne(メダルオブオナー エアボーン)レビュー --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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レビュー最終更新日 2008年11月
タイトル
Medal of Honor: Airborne(メダルオブオナー エアボーン)
機種:PC
ジャンル:FPS
発売年:2007年


紹介
メダルオブオナーエアボーン(以下エアボーン)はEAが開発と販売をしている第二次世界大戦の空挺部隊を題材にしたFPSである。
エアボーンはPCだけでなくPS3とXBOX360へもマルチ展開されていて、ゲーム内容に差はない。
ゲームエンジンはUnreal Engine 3を使用しており、光の表現やテクスチャのテカリ具合の独特さはいかにもこのゲームエンジンらしいものになっている。
なおPC版は日本で発売されていないので輸入されたものを入手する必要がある。
現在はエアボーン単体の他にメダルオブオナー三作をセットにしたものが発売されているので、自分のニーズにあったものを買えばいいだろう。
あとPC版は英語版のみなのだが、シングルプレイでの台詞やインターフェイスを日本語化するMODが公開されているので是非とも利用したい。
ここで紹介するスクリーンショットはすべてMODを適用したものである。

ブリーフィング画像
作戦前のブリーフィング

エアボーン最大の特徴は、ゲーム開始時に飛行機からパラシュートで好きな地点に落下できることである。
マップはある程度の大きさをもつ閉鎖的な空間になっていて、そのなかのどこにでも降下することが出来る。
またそこではいくつかのミッションが与えられており、どの順番でどのようにして攻略しても良いとされている。
したがって、降下する地点を選んだり攻略するルートを変えることで様々なプレイスタイルを許容できるデザインになっている。
あとゲーム開始時に戦地へ持って行く武器も自分で選ぶことが出来るので、ゲームデザインは自由度を重視していると言える。
この手の第二次世界大戦ものとしては結構異質なゲームであることは間違いない。
ただし、最初に指定されたミッションを完遂すると新たな任務が追加されるのだが、その任務は一本道のスタイルで従来のゲームと変わりない。
全部で六つあるチャプターそれぞれの前半は自由度が高く、後半は自由度の少ないデザインになっている。

ゲーム開始じの飛行機からの落下画像
降下!

戦闘のスタイルはコールオブデューティーシリーズやメダルオブオナーアライドアサルトのようなアクション性を重視したものになっている。
ジャンプ撃ちとか走り撃ちをしてもガンガンあたるしヒット感覚も悪くないので爽快な戦闘を楽しめる。
ただし敵の攻撃力がかなり高く設定されているのでそれなりに慎重に進む必要がある。
体力のシステムは少し変わっていて、全部で四つのブロックに分かれており、ブロック単位で自動回復が行われるという仕様である。
ダメージをうけて多くのブロックを消費してしまうと、消費したブロックについては回復アイテムをとらないと回復しない。
面白い要素としては、敵を倒すと武器それぞれに経験値がたまっていって能力が強化される要素がある。
例えば普通のライフルが能力強化によりスコープがついたり、サブマシンガンがドラムマガジンになって装弾数が増えるといった具合である。

世間的な評価としては日本や海外でも低くも高くもなく、感想もほぼ同じような感じ。
チャプター数が六つとボリュームが少ないことと、コンシューマ版はPC版そのままなので難易度が高いことが主な不満点としてあげられている。
他にはコンシューマ基準で作られたためかPC版のインターフェイスがわかりにくいことや、安定性の問題もちらほら見かける。
中身に対してすさまじく低評価をつける人もいなくて高評価もつける人もいないので、決して悪いゲームではないのだが評価は前々作や前作と比べると見劣りするものになってしまっている。

夜の戦闘シーン画像
固定銃座で攻撃!


レビュー
●画期的な要素を盛り込もうとしたものの中途半端で既存のゲームと何ら代わりがなくなっている

エアボーンでもっとも力が入れられていたのは、やはり自由降下による自由度の高さから生まれるゲームプレイの変化だろう。
開発の経緯をたどってみるとかなり意欲的かつ革新的なものをつくろうとしていたみたいだが、製品版では中途半端なものになってしまっている。
やはり技術的な制約や開発期間の問題、ゲームバランスのなどがその理由としてあげられるだろう。
いくつかの問題点というものを挙げてみよう。
まず、どこに降下しても結果としてやることは変わらないのでゲームプレイに変化が生まれない。
確かに降下する場所によって敵と戦う場所が多少変わるのだけれども、クリアに必要なミッションは変わらない(砲台を破壊せよ、など)。
例えば破壊しなければならない砲台には当たり前のように敵がウジャウジャと守備しているので排除する必要あるが、これはどこへ降下しようとも敵の配置は変わらない。
つまり攻略順序によって目標地点に変化が生まれていないので、何度やり直しても細かいブロックごとにスクリプト(台本)で固められた敵配置や敵の行動がなされているだけなのである。
降下地点によって変わる要素と言えば、敵と交戦する場所のささいな変化や攻略順序のちがいである。
もうひとつ言わせてもらうと、飛行機からパラシュートでどこへでも降下できるというわけではなく、割と狭い範囲にしか着地することが出来ない。
飛行機から飛び降りてフワフワしている状態から行きたい場所へ移動を試みても、思ったより移動距離が小さいので限られた場所にしか着地できないのである。

高所からの攻撃をする画像
こういう高所へ降りれば楽になる

まあつまりは目玉要素はたいしたことがなかったのだ。
パラシュートによる降下が製品のようにあったとしても、逆になかったとしても、ゲームプレイには大きな変化はなかったのではないかと思われる。
任意地点への降下は毒にも薬にもなっていないと言えるだろう。
ただ、見方を変えてみるとエアボーンは戦闘バランスとかマップのつくりにおいては他のメダルオブオナーシリーズで最も上質だと思う。
特にチャプター前半の自由度の高いパートでは、高低差を利用したマップの作りには関心をする。
マップは狭いものの一種の箱庭のようにものになっており、一つの場所をどのように攻めるかについての選択肢が多い。
例えば敵がたくさんいる場所の側面から攻撃したり、高い櫓(やぐら)から狙撃することが可能なように作られている。
ただしこれはチャプターの前半部分のみの話であって、後半はただの一本道ゲームと化している。

戦車と戦う画像
高低差を利用しよう

マップの作りという面では高低差が非常に重要視されているところが評価できる。
どの建物の屋根にも登れるし、ちょっとした段差でもジャンプすれば上ることが出来る。
この屋根はほとんどが三角屋根なので身を隠しながら下にいる敵を覗いたり攻撃することが可能になっている。
それまでのメダルオブオナーシリーズではそうしたことができなかったので、とても新鮮で新たな面白さがあると言えるだろう。
またどのマップにも超高い場所がもうけてあり、そこから下にいる敵をスナイプし放題となっている。
もちろん最初は敵がそこを占拠しているので建物の下から攻略するのは結構つらい。

戦闘のバランスもこれはこれでバランスが良い。
自動回復制とメディキット回復制の複合システムなので、体力が余っていればガンガン進むことが出来るし、体力がなくなってもヒットアンドアウェイを繰り返せば詰みになることはない。
また調子に乗って敵に突撃を繰り返していると体力がなくなるものの、自動回復する余地も残されているので結構積極的に進めることが出来る。
これは自動回復のみのゲームだと起こりやすい緊張感の欠如や、ごく普通の体力方式のゲームでたまにある攻略不能を防ぐ意味で成功していると言える。
もちろん好みの問題はあるのだろうが、敵との緊張感を保ちつつスピード感のある戦闘を楽しむことが出来る。
他にスナイパーのスコープを除いた瞬間は画面がぼやけるなど、一つの武器が極端に強くなるようなことはない。
弾が不足しても、威力は低いながら弾は無限のピストルもある。
高低差のある場所に配置された敵によって、戦闘は面白いと感じるはずだ。

ロケットランチャー兵士の画像
このロケラン兵士はむちゃくちゃ堅い強敵

そして敵や味方のAIも地味ではあるが出来は良い方だと思う。
味方は強すぎず弱すぎずの絶妙なバランスで臨機応変に動いてくれる。
攻撃をして敵を弱らせておくと味方はきちんと敵を処理してくれるし、障害物をきちんと認識して自分と進軍してくれるのだ。
敵も一カ所でじっとしているのではなく、細かく位置を変えて攻撃してくることが多い。
場合によってはこちらへ突撃してくるから困ったものだ。

比較的好印象の意見を述べてきたが、欠点というか非常に鼻につくことが一つだけある。
それはエアボーンはコールオブデューティーシリーズを意識しすぎているのではないかと言うことだ。
第二次世界大戦ものFPSとして高評価を得たメダルオブオナーシリーズの開発会社の一部が立ち上げたシリーズが、戦争物FPSのお株を奪ったのは紛れもない事実である。
しかしだからといって真似する必要はないのだが、グラフィックやインターフェイスからどことなく漂う空気は明らかにコールオブデューティーらしさがある。
ゲーム全体のバランスは悪くはないもののこれと言って目玉になるようなものがないので色々と劣化したコールオブデューティーに見えてしまうのは自分だけではないだろう。
確かに差別化はされているのだが、もっと違う方向へ向かわないといつまでたっても後塵を拝し続けることになるのではないだろうか。
あと残念なことに過去のシリーズと比べるとサウンドはかなり貧弱で、これはおおきなマイナスポイントだった。
また一周するのにプレイ時間が6時間もかからないのは完全にボリューム不足である。
パラシュート降下によってリプレイ性が高いゲームであるのならばそれでもよかったのだが、その水準まで今ひとつ足りていない。

室内戦闘シーンの画像
味方と建物のの制圧をする

まとめ
空挺部隊のパラシュート降下を利用した無限の可能性のようなものは期待しない方が良いと思う。
ただ、ある程度の大きさを持ったマップを好き勝手に攻略する面白さというのは実現している。
ゲームバランスはコールオブデューティーに似ているので、それが好きならすんなりと入る込めるだろう。
戦闘の感覚は良好だしマップのロケーションもしっかりしているのに、なにか足りないゲームと言える。
それはやはりエアボーン独特の要素が物足りなかったからだろう。
ゲームとしては悪くないので気になった人は買っても後悔はしないと思う。

点数66点
リンク

公式ウェブサイト

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