Half-Life: Opposing Force (ハーフライフ オポージングフォース) レビュー --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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レビュー最終更新日 2009年5月
タイトル
Half-Life: Opposing Force (ハーフライフ オポージングフォース)
機種:PC
ジャンル:FPS
発売年:1999年


紹介
Half-Life: Opposing Force (ハーフライフ オポージングフォース、以下オポージングフォースとする)はハーフライフの拡張パックとして1999年に発売されたゲームである。
開発は本編とは違う会社のGearboxが行っている。
かつては本編と別売りされていたが、現在はハーフライフのパッケージに含まれているので、入手に困ることはないだろう。

オポージングフォースの特徴は舞台設定にある。
ハーフライフ本編と同じ場所、同じ時間軸でゲームが進行するのだ。
そしてオポージングフォースの主人公は、本編では敵として現れた「海兵隊」である。
したがって本編を違った角度から見てみようとしているのがオポージングフォースだと言える。

味方ヘリコプターが墜落しているシーン
今回の主人公は、本編では敵だった海兵隊だ

ゲームの中身は本編を踏襲しているものの、武器を一新して本編とはひと味違うプレイ感覚になっている。
例えば多数の味方を率いて敵と戦うシーンが追加されていて戦闘色が濃くなっている。
使用可能な武器の数や弾薬数が豊富なことも、戦闘に特化したと感じられる要素と言える。
オポージングフォースはサバイバル色の強かった本編と比べると普通のFPSになっているとは言えるが、全体的に体力回復の箇所が少ないため、随所にサバイバルな感じがするゲームデザインとなっている。

なお、Opposing Force という題名は二つに意味に引っかけてある。
ニュートンの第三法則として知られる「作用・反作用の法則」と、本編とは違う(Opposing)勢力(Force)の主人公に焦点を当てているという意味だ。
元のゲームであるHalf-Lifeは日本語に訳せば物理用語の「半減期」となるので、同じ物理用語に掛けたのだと思われる。

謎解きシーンの画像
戦闘に特化しいたといっても、謎解きは健在だ


レビュー
●拡張パックとは何かをしっかりと考えて作られた良質のゲーム

最近では家庭用ゲーム機でもダウンロード販売が行われるようになり、そしてダウンロード販売に伴って拡張パックが売られることが多くなってきた。
一方のPCゲームでは、ダウンロード販売が行われる前から拡張パックの販売は結構行われていた。
拡張パックとは、元のゲームを流用して新たなミッションや追加要素を付け加えるオマケのようなものである。
最近ではあまり見られないが、特に売れ行きが好評だったゲームは「とりあえず出しておけ」といった感じで出されることが多かったらしい。
おそらく一度作ったゲームを流用することで、少ない投資で最大の利益を得ようとしているのだろう。
しかし拡張パックは、往々にして本編の製作会社とは別の会社が製作を担当し、ゲーム内容がだめだめになってしまうことが多かった。
ところが今回レビューするオポージングフォースは一味違ったのだ。

味方と一緒に化け物と戦うシーン
味方と一緒に戦うシーンもある

拡張パックを購入する人は、ほとんどの場合、本編をクリアして気に入った人である。
つまり一度クリアしている人がやるゲームが拡張パックなのだ。
だからこそ拡張パックを作るメーカーは、一度クリアしているプレイヤーに向けてゲームを製作するべきである。
しかし拡張パックを購入する人は、本編の純粋な延長線上の拡張パックでは飽きてしまうだろう。
さらに本編とまったく違うゲームであっても、期待はずれになってしまうだろう。
拡張パックは非常に立ち居地が難しいのだ。

その点ではオポージングフォースは本編を踏襲しつつ、それでいて違うゲームへとうまく昇華している。
そして物語自体が本編を尊重するような作りになっている。
オポージングフォースは絶妙なバランス感覚の上に作られているのだ。

バケモノをナイフで切る!
追加された敵もいる

元のゲームのハーフライフはゲーム全体に漂う「サバイバル感」と「没入感」が抜群に優れたゲームだった。
オポージングフォースは本編よりも若干戦闘と重視したバランスになっているので、「サバイバル感」と「没入感」は本編ほど高くはない。
しかし本編を一度クリアした人がやるゲームなのだから、マンネリ感をなくすためにバランスが変わるのは当然のことである。
ただこのとき大事なのは、本編のイメージを壊さない程度にバランスを変えなければならないことだ。
オポージングフォースはハーフライフの感覚を残しつつ違うゲームになっている。
まず、武器が完全に入れ替わっている。
性能がハーフライフ本編と違っているので、本編をやりこんだ人でも新しい感覚で臨めるのだ。
そしてオポージングフォースでは見方AIを引き入れた戦闘シーンが豊富に用意されている。
一見すると同じようなゲームだが、バランスが微妙に変化しているのだ。

味方ヘリコプターが墜落しているシーン
味方を助けるシーンも

だがこれだけではオポージングフォースの良さを語ることはできない。
最も評価されてしかるべきところは、「本編と同時進行」の物語であることだ。
オポージングフォースはゲームをゲームを開始すると、轟音が鳴り響くヘリコプターに乗っているシーンから始まっている。
このシーンのとき開いている扉から見える外の景色をよーく見てみると、ハーフライフ本編でヘリコプターと戦った場面とまったく同じ場所を飛行していることがわかる。
またゲームをしばらく進めていると、ハーフライフの主人公である「ゴードン・フリーマン」の情報が漏れ聞こえたり、たびたび目撃することになる。
つまりオポージングフォースは、ゲームそれ自体をやると同時にハーフライフ本編の記憶がよみがえってくるように作られているのである。
前の段落で「サバイバル感」と「没入感」は損なったと述べたが、逆に得たものはストーリー性と客観性なのである。
オポージングフォースはハーフライフ本編を敵側の視点から見ることで、ストーリーを重層的に見せることに成功している。
拡張パックとはこのように本編をやった人がより楽しめるようにあるべきなのだ。
そこら辺に転がっている、後日談を述べるゲームはいらない。

ただ残念なところがあるとすれば、ハーフライフの戦闘が面白くないのに戦闘に特化してしまった点にある。
ハーフライフは当時としては優れた敵AIによる緊張感のある戦闘を持っていたが、銃撃感覚に関して結構低いレベルだった。
オポージングフォースは戦闘を重視したために、弱点が余計に際立ってしまったように感じる。
本編とゲームバランスを変えたはいいが、あまり成功していないように感じる。
あとゲームの終わり方には納得できない人も多いはずだ。
オポージングフォースをやった人にしかわからないが、あれだけはどうしても文句をつけざるをえない。

ヘリコプターからのシーン
これが冒頭のシーンだ

まとめ
拡張パックがどうあるべきかを考えて作られたゲーム。
ハーフライフ本編を終えた後でも新鮮な気持ちで遊ぶことができるだろう。
このようにすばらしいお手本があるのに、後のゲームの拡張パックは本編を延長させただけのものが多いのはとても不思議なぐらいだ。
ただ、ゲームバランスについては完全に本編に劣っている。
それでも巷に溢れるゲームと比べたら十分に良質であることに変わりはないのだが、偉大な親を持つ子供は得てして厳しく見られてしまうのだ。

点数77点
リンク

公式ウェブサイト(パッケージ)



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