Half-Life 2(ハーフライフ)レビュー --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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レビュー最終更新日 2008年11月

Half-Life 2(ハーフライフ2)
機種:PC
ジャンル:FPS
発売年:2004年


紹介
ハーフライフ2(HL2)はValveが制作し、2004年に発売された。
前作のハーフライフは1998年に発売されたのだから、足掛け6年かかっての続編の登場となった。
ハーフライフはFPSの表現方法を変えたとまで言われる大傑作ゲームだった。
さてその続編は前作からの期待に答えられるものだったのだろうか。

自分の意見では越えていないと思うし、数々のレビューサイトからも越えていないと評されている。
ただし2004年に発売されたゲームの中では群を抜く評価(点数)を得ている。
そういうわけでゲームオブザイヤー(年間最優秀ゲーム賞とでも訳しておけばいい)をいくつものレビューサイトから受賞している。
特に評価されていたのは、当時としては美しくて軽いグラフィックスと、独特の世界設定、そして重力(物理演算)によって可能になった未知のゲーム体験である。

前作に登場する人もいるがわずかばかりだ。画像はその人
前作とは違う時代で展開されるストーリー

前作は閉ざされた研究所から脱出するサバイバル感を楽しむところが最も評価されていた。
ハーフライフ2でうってかわって、豊かに描写された比較的広い空間を立ち戻ることなく次々と突き進むようになっている。
サバイバル感は少なく、新たな目標地点へ進むことが当座の目標になっている。
続編の名を使ってはいるものの、プレイ感覚や面白さは別のところにあると言っていい。

このゲームに採用されているゲームエンジンはソースエンジンというものである。
出た当時はバグが多くて大変だったらしいが、今はかなり改善されているので問題はない。
ソースエンジンによて描き出される世界は、それまでのゲームよりも一段階上のリアルさを持っていた。
特に透明感のあるグラフィック描写は、好みの問題もあるとは思うが、今(2008年)でも時代の差を感じさせないほど立派である。
また強力なグラフィックエンジンによって描き出される近未来のSF世界はかなり魅力的である。
もちろんHL2制作チームによる驚異的な描き込みがあってこそのことである。

緻密に書かれたグラフィックの画像
描きこまれたグラフィック

HL2が出るまで物理エンジンを導入したゲームはいくつかあったのだが、ゲームの内容に直接関わって来るものは少なかった。
ここまで話せば分かるだろう。
物理エンジンによる物理計算、つまりは重力や物の重さをゲームの中に本格的に取り入れたのがHL2である。
例えば目の前に段差があるとする。
そのままでは自分のジャンプ力では届かないので、違う場所から箱をとってきて、段差の上にのることができる。
これは非常に簡単な例だが、ゲーム中にはもう少しややこしい「仕掛け」が登場する。
特に重力銃という大抵の物体を投げることのできるアイテムを使って、この仕掛けを説いていく場面が多い。
この重力銃はかなり便利で、物を投げ飛ばせば敵を倒すこともできる。
つまりそこらに落ちている箱やドラム缶が武器となるのだ。

ハーフライフによくある「謎解き」シーンの画像
扉にかけてある板をはずす

ただ単に撃ち合うゲームだったFPSに物語を入れた初代HLであるとすると、HL2は撃ち合うだけではなく頭を使ったパズル的要素による仕掛けや敵の排除を取り入れたものといえる。
ゲームが始まってから終わるまで、一貫としてストーリーが進んでいくのは初代と変わらない。
全部で14のチャプターに別れていて、場面ごとに違ったプレイスタイルが要求される。

またHL2を手に入れるには、ゲームオブイヤーエディション、オレンジボックス、STEAMでのダウンロード販売の三つの方法がある。
それぞれに付属するゲームが違ってくるので、自分のニーズに合った商品を選べばいいと思う。
また英語版を買っても日本語の字幕を表示することが可能なので、安かったら海外版を買ってもいい。

ロボ型の味方が援護をしてくれる
味方が援護してくれることも

レビュー
●中身を詰め込みすぎて玉石混合になってしまった大作

PCゲーム関連の掲示板を見ていると「最近のゲームは技術デモのようになっている」との声が時々書き込まれている。
PCゲーム市場では、ソフトウェア、ハードウェアの進歩とともに高い技術を使ったゲーム制作が可能になり、実際に高い技術が使われたゲームが発売されている。
確かにそれまでは出来なかった表現が可能になることは喜ばしいことだが、技術制作に時間をかけ過ぎてしまうとゲームの中身が疎かになってしまう危険性も併せ持つ。
どれくらい技術に投資するのか、ゲームをつくるのに時間をかけるのかのさじ加減がとても大切である。

HL2は今から思えば技術に振り回されてしまったゲームなのだと思う。
おそらく物理エンジンと重力銃による斬新なプレイスタイルがHL2のウリであった。
ところがゲーム全体を見渡してみても、このシステムを上手く使ているのはたった2つのチャプターのみである。
私が未知のプレイ感覚と評しているように、このチャプターでは他のゲームでは体験できない面白さを存分に味わえる。
そこでは自分の弾薬が少ないために、マップに散らばっている爆発物を爆発させて上手いこと敵を巻き込む必要があるので、頭を使う面白さがある。
ただし全体の量から見てみるとこのチャプターの量はかなり少なくて、物足りなさが残ってしまう。
では他のチャプターはどうなっているのだろうか。

エネルギーボールを投げて敵を倒す画像
重力銃で物をつかんで投げる

残りは大きく分けると乗り物を使う場面、敵との戦闘の場面、イベント進行に使われる場面の三つである。
イベント進行の場面は、一人称視点によるアドベンチャーを目指すHLシリーズらしさが表現されているパートである。
とりあえずHL2の世界を知ることが出来、また主人公のゴードン・フリーマンが何をなすべきかがおぼろげに分ってくるので悪くはないと思う。
ただ、本編をクリアしても謎として残される要素が多すぎて何がなんだかわからないのは大きな欠点だろう。
続編(というか本編の謎が明らかになってくる拡張パックだが)を前提とした作りは、やっぱり不完全燃焼だし、嫌われる。

手短に言うと、敵との戦闘は面白くない。
まず武器の種類が少ないので単調になりがちである。
そして人間型兵士とエイリアンの二種類しか敵が存在していなくて、しかも毎回同じような動きをしてくる。
15時間近くも同じような敵と武器を使っていたらさすがに飽きる。
武器に関しても初期武器のピストルが一番強いのかと思ってしまうくらいに強い。
割と遠距離でもあたるので、人間型の敵にはヘッドショット狙いのピストルが最強である。
サブマシンガンは弾がばらけすぎて当たらないし、アサルトライフルは調子のっているちすぐ弾切れになる。
ただまあショットガンはとても強くて、また見落としがちだが重量銃で物を投げても敵を簡単に倒せる。
武器に特徴をつけることで、場面に合った武器選択の面白さを生かす戦略的なFPSにしようとしたのだと思う。
しかし武器選択を必要とされる場面が明確に設定されていないので、結局はどの武器でも戦えるのは勿体無い。

動きがすばやいが耐久力が低い敵の画像
確かにショットガンが有効な敵など、差別化はされているが。

問題は乗り物パートである。
これ以外のレビューを読んだ人にはわかるとは思うが、HL2で最も酷評されているのが乗り物である。
乗り物パートの問題点は主に、不必要なほど長いこと、操作性が悪いこと、単調で変化のない構成、頻発するローディング、さらに二回も乗り物に乗る必要があることである。
なぜこのような乗り物パートが取り入れられたのかはわからないが、一説によるとソースエンジンによる美しい描写を楽しんでもらうために入れたという。
なるほど、これは説得力がある。
なぜならば乗り物パートでは水の場面が多い。
水の描写はグラフィッククオリティを測る上でかなりわかりやすいポイントであることはよく知られている。
ついでに言うと、物理エンジンを駆使したパズルも乗り物面の所々に配置されている。
極端な話、ソースエンジンの技術デモンストレーションが乗り物ステージだったとも言えなくはないだろう。

またHL2ではロードがよく起こり、それがまた長い。
特に乗り物を扱うステージではマップの移動速度が早いために、時間当たりのロードの回数は自然と増える。
そうでなくても、ステージ途中でのロードはほかのゲームと比べてもかなり多い。
同じ年に発売されたFarcryとは雲泥の差である。(Farcryは広大なアウトドアを表現しながらもロード回数は驚くほど少ない)

ホバークラフトに乗る画像
長い長い乗り物パート

最後にマップごとの統一感が薄いことも取り上げる必要がある。
チャプターごとの統一性が少なく、あたかも違うゲームをやっているような感覚に陥る。
外観だけではなく、必要なアクション、または難易度、マップのつくりには一貫した「考え」のよなものが感じ取れない。
ゲームの変化をつけてプレイヤーを飽きさせないことは重要だが、展開が全体的に間延びしているので効果はかなり低い。
言い方を変えれば、チャプターごとの出来不出来が激しい。
面白いチャプターもあれば、単調なチャプターもあるし、プレイヤーを誘導するデザインが悪いチャプターもある。
実はチャプターごとに制作チームが違うという話を聞いたことがある。
巨大化するゲームを開発するには必要な分業ではあるが、HL2ではうまく噛みっていなかったのではなかろうか。

仕掛けを駆使してゾンビみたいなのを倒していく場面の画像
とても面白い場面「レーベンホルムには行かない」

もういちど最初の話に戻ってみるが、HL2はゲームエンジンの技術においてすばらしいものがあった。
しかし技術を見せるために、長ったらしい乗り物パートを入れた。
またPCで発売するFPSに大切な戦闘や射撃感覚のチューニングは足りていなかった。
そしてエンジン制作に時間がかかったためか、出来の良いパートと悪いパートが混在している。

少し苦言が多かったが、それはHL2が超大作として期待されていたからである。
悪いといわれているチャプターでも並みのFPSの品質には劣っていない。
十分に質の高いゲームなので、ほとんどの人が存分に味わえる大作だと言える。

話は少し変わるが、物理エンジンを導入したことにより画面にある小物が色々と動かせるようになった。
これによって、進行のために必要なものがどこかへ挟まったり消えたりするおそれが高まってしまう。
しかし自分がプレイした限りではそのようなバグに引っかかって進行不能になることはなかった。
あまり注目されないところだが、Valveが時間をかけてテストプレイ(デバッグ)を行った賜物だろう。

味方がシールドを解除してくれるまで待つシーンだ
扉を解除してくれるのを待つ

まとめ
お金と時間をかけてできた大作だけあってボリュームは多く、ロケーション変化も多彩で作り手の意気込みが感じられる。
しかしチャプターそれぞれがちぐはぐしていて、違うゲーム集の集まりのようにも感じられてしまうのが欠点。
シューティング部分やアドベンチャーとしての謎解きそれ自体の出来はあまりよくない。
とにかく欠点はあるものの、広大なスケールと話題性、独特の空気感などはほかのゲームでは味わえないものがある。

点数78点

リンク

公式ウェブサイト
Valve


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