任天堂 “驚き”を生む方程式 紹介・感想 --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
最終更新日 2010年8月
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任天堂 “驚き”を生む方程式
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著者:井上理
出版社:日本経済新聞出版社
出版年:2009年
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任天堂は社名こそよく知られるものの、社員が「顔出し」を全くしない企業である。
したがって長年秘密に包まれた存在でもあった。
関連書籍が全くないのも、それをよく表している。
経営陣の岩田や宮本、相談役の山内組長へのインタビューを再構成し、任天堂の経営哲学を明らかにしている。
組長はインタビューにまったく応じない人として有名でもあるので、かなり珍しい本であると言えるだろう。
任天堂を語るのなら彼は欠かせない人間でもある。
任天堂の強さを知りたい人には必読の本。
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●任天堂らしさとは何か
□飽きられれば終わり
300ページもある本なので細部にわたって任天堂について語られている。
その大量の内容のどこに任天堂を見つけるかは人によるだろう。
私は岩田社長が常々語っている「飽きが最も怖い」というのが任天堂の共通見解だと思っている。
ゲームは娯楽である。
言い換えると生活必需品ではない。
したがって消費者にいつも驚きを提供して買ってもらう必要がある。
山内相談役はそれを「ソフト体質」であると考えている。
つまりどのようなソフトウェアを作りたいかを考えてハードを考案していく。
ソフトが主でハードは従なのだ。
もちろんハードを知り尽くした上での、「ソフト主」である。
組長の考えは任天堂社員に共有されていたのかどうかは怪しい。
比較的接触のある上層部はおぼろげに分かっていたのかもしれないが、後を引き継いだ岩田社長は社員との対話を積極的にすることで伝えていった。
2000年代序盤にゲームが飽きられつつあるということを察知した岩田は、ソフト体質の任天堂へ戻るべく、地道な行為を積み重ねていく。
『我々は声が大きくてゲームをいっぱい買ってくれる人の姿をつい見てしまう。そこにあわせたモノづくりをどんどんした結果、ゲームをやる人が減っているのではないか』(44ページ)
□身の丈を知れ
もうひとつ任天堂の強みを見いだせるのは、自分たちは何ができるのかをしっかりと把握していることだ。
ゲーム業界ではマイクロソフトとソニーという超巨大企業が競合をしている。
だから体力勝負に持ち込まれてしまうと絶対に勝てないわけだ。
そこで任天堂は大量のキャッシュを保持し、取引先企業とつきあっていく。
また潤沢な資金は研究開発費に大量に投下している。
任天堂のすごみはここにあると言えるだろう。
社員がやりたいことを即座に形にできる仕組みがある。
他ゲームメーカーと比べると圧倒的に独創的かつ隙のないゲームが生まれるのは、豊富なお金がバックについているからだ。
むやみに事業拡大をせず、任天堂らしさを共有できる人数で切り盛りしていくというのも「身の丈を知る」ことの大切さを大事にしているからだろう。
ゲームキューブ時代に他社とのパートナーシップで生まれた数々の駄作は、任天堂が拡大戦略をとったツケだったのかもしれない。
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★★★★★
任天堂の経営について書かれた本はこれしかない。
社長が岩田聡にかわってからの快進撃の理由がすべて書かれている。