テレビゲームから見る世界 紹介・感想 --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
最終更新日 2010年7月
-
テレビゲームから見る世界
-
著者:山下恒男
出版社:ジャストシステム
出版年:1995年
-
ゲーム愛好家でもある教育心理学者が、ゲームを通じて感じたことを書き綴った本である。
著者はシミュレーションゲームやロールプレイングゲーム、そしてどのジャンルにも属しがたい変わったゲームをプレイしてきた。
そこから見えてくるのは多種多様で一言にゲームと表現できないほど広い世界であった。
ゲームはそれ自体で完結するものではない。
周りを巻き込みつつ常に変化し続ける文化のひとつとして、人との関わり合いを考えていく。
-
●ゲームとは何かを再考させてくれる
□何をもってゲームとするのか
だいぶんおさまってきたが、ついこの間まではDSのブームで何がゲームなのかという話が真面目に議論されていた。
知育系ソフトからソーシャルゲームまで私たちが親しんできたゲームとは違っていたのだ。
あのブームで脳トレなどを快く思わない人たちからは「ゲームらしいゲーム」なる言葉まで生まれた。
しかしどのようなものがゲームなのかを考えてもはっきりとした答えは出ない。
ゲームの意味は、英語の辞典では「暇つぶしや楽しみ」とされているぐらいなので、どうとでも考えられる。
テレビゲーム(著者はこの言葉を用いているので私も使用する)は更に表現方法を広げたので、かつての定義さえ当てはまらなくなっていると言えるかもしれない。
シミュレーションゲームのようなコアなものから、人工知能と会話する異質なゲーム、手術を再現するだけのゲーム、そしてバーチャルリアリティ体験をさせるゲーム。
どれもがゲームなのなのだ。
しかしそこから表現される世界や遊ぶ人たちが受ける印象はまったく違う。
囲碁のような既に存在するゲームの模倣であっても、テレビゲームではコンピュータが相手だ。
麻雀を仲間内で囲む雰囲気は楽しめない。
バーチャルリアリティを体験するゲームは、それ自体の何が楽しいかと言われても一言で表現できないだろう。
話題が非常に多岐にわたるので、ゲームを考える示唆を与えてくれる本であった。
あのゲームが良い悪い、あれはゲームではないと批判する前に、既に存在するゲームを見つめてみることも大切なのではないだろうか。
-
★★★
ゲームは閉じた存在ではない。
やる人たち、見る人たち、誰もかれもに関わってくる存在なのだ。
そういうことを感じさせてくれる本。