キング・オブ・ゲームの未来戦 紹介・感想 --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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最終更新日 2010年8月

キング・オブ・ゲームの未来戦(バトル)―任天堂、セガ、松下、ソニー…生き残りを賭けた王者たちの激突
著者:山名一郎

出版社:日本実業出版社
出版年:1994年

 
紹介
1994年当時の「次世代機」を特集した本である。
ゲーム機産業を中心に据えた視点が特徴だ。
プレイステーションやセガサターンのアーキテクチャの説明や、任天堂が抱えていた流通形態の爆弾について事細かに書かれている。

感想
●今読んでも得るところがある

技術がゲームを引っ張ったあのとき
1994年前後にどのようなやりとりがあって、どのように覇権争いが行われていたのかを知るために格好の本だ。
なぜあの年代に次世代機が集合したかについては、技術の進歩と密接な関係性があると著者は主張する。
その理由は、ワークステーションにしか使われていなかった高性能プロセッサーの価格が、94年末には家庭用へも導入できるほどにこなれてくると言うIC業界の予想があったからだそうだ。
ここに目をつけたのがソニーであり、松下電器(3DO)であった。
後に出版されたプレイステーション秘話「ソニーの革命児たち」を読むと、久夛良木健はかなり正確に予想をしていたことが分かる。

また松下電器はマルチメディアへの期待を託して3DOをひっさげてゲーム業界に参入した。
しかし、参入当時は「VTRの後継として」3DOが位置づけられたいた。
バカみたいな価格と合わさり、ソフト日照りにおちいった3DOはゲーム機として出発するが、時既に遅かったといえる。

ここからは結果論、歴史修正となるかもしれないのでおおらかに聞き流してほしい。
当時のゲーム業界は2000年代半ばと同じように、大作だけが売れていく縮小形態に入っていた。
ファミコンとさほどかわらないスーパーファミコンのゲームと、一本一万円以上もするソフト価格によってゲーム業界は頭打ちを迎えていた。
閉塞的な状況を打開するために任天堂がとった方策が、少数主義であり、最新の技術をふんだんに投入したウルトラ64(ニンテンドウ64)であった。
またソニーはソフト価格をCD生産によって下げ、流通改革でユーザーにいつでも人気ソフトを供給できる体制を作り、誰でもウェルカムな開発体制で新たなメーカーを引き寄せた。
結果的にソニーもゲーム市場の縮小を食い止めたことになる。
ただ、この本ではソニーも松下と同じように、「そこに市場があるから」参入した企業としか描かれていない。

ゲーム機争いを、その裏で使われるCPU争いと同等のものだと扱っているのも、いまからみると面白い。
つまり何千万台もの受注を取り付けたプロセッサーを作る企業は、一躍CPU業界の騎手へと躍り出る可能性が示唆されているのだ。
後にソニーがPS2で「エモーションエンジン」、PS3で「セル」を開発したのは、このような野望があったためと言われている。

マルチメディアへの期待
当時の人間はおおかれすくなかれマルチメディアへの期待を持っていた。
マルチメディアと言っても、今からみると何のことでもない。
拡張性があり様々なメディアツールへ繋げることができることを、大層にマルチメディアと言っていただけなのである。
今ではインターネットの普及であれもこれも全てがネット接続でまかなえる。
ITの進歩は、過去の思考をすべて無にしてしまうほどの強烈なものだったと感じる。

おすすめ度

★★★★

94年の次世代機戦争は技術の臨界点が引き起こしたものだとする考えは面白い。
確かに94年戦争は、ハードウェア偏重の次世代機争いだった。


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