図解入門業界研究 最新ゲーム業界の動向とカラクリがよーくわかる本  紹介・感想 --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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最終更新日 2010年5月

図解入門業界研究 最新ゲーム業界の動向とカラクリがよーくわかる本 第2版
著者:橘 寛基

出版社:秀和システム
出版年:2010年

 
紹介
ゲーム業界に就職をしたい人のための入門書である。
ただ、ゲームの過去・現在・未来についてまとまった情報が載っているので、就活を目的としなくても読んでいて面白いだろう。
見開きに一ページで一つの話題を解説するというスタイルで200ページにわたって情報が書かれている。
入門書と言うことでゲーム業界の動向を広く浅く扱っている。
個別の会社に焦点を当てるのではなくて、あくまでも業界の流れを説明する業界本である。

3年前に第1版が発売されたのち、情報を新しく書き換えたのが本書「第2版」だ。
ちょうどPS3やWiiの普及が本格化してきてゲーム産業も大きく変化したので、書き換えられている。
こういう最新の情報本は時間が経つと陳腐化してしまう面は避けられない。

美辞麗句ばかり並べている本ではなくて、現在や今後直面する問題点についても書かれているのが業界本らしさのある特徴だろうか。
表紙には「無限の可能性を秘めた業界」と心躍る文が書いてあるが、著者の見方はそれほど楽観的ではない。


感想
●痛いところもきちんとまとめている

□業界の鳥瞰図

広く浅くゲーム業界をまとめている本である。
データの驚くような読み取りや詳細な研究があるわけではないが、ゲーム白書のデータをグラフに書き起こしたり、見開き1ページで一つの項目を説明するなど見栄えを良くしてや情報の整理がされている。
新聞やネットでは個別の事象を扱っていることが多い。
例えばひとつの企業や中古の著作権問題の特集記事。
本書は情報の深さを犠牲にするかわりに、ありとあらゆる事柄を詰め込んでいる。
全体を見渡すような視点で各種データを載せていく、ジャーナリストらしい本である。
たぶんすべての話題について詳しい人はゲーム業界に籍を置いている人ぐらいだ。
それくらい多岐にわたっており、情報通の人でもどこかのページが新鮮に感じるだろう

□ゲーム業界の問題点や今後の展望も

読者の対象はこれからゲーム業界を目指す人である。
だから先を見据えた議論としてゲーム業界が直面している問題点や未来が描かれている。
著者はおそらく、いままでの延長上ではゲーム業界は生き残れないことを言いたいのだと思われる。
確かに続編ばかりしか出ないソフトをみていると、ユーザーはマンネリに飽きているのは明らかだ。
それがDSやWiiの快進撃、そして軽いゲームを楽しむiPhoneへと人が流れていった理由である。
昔は一山当てて大もうけの業界だったが、2000年頃から再編が行われ、さらに成熟化した現在は大企業中心の業界へと変わってきている。
こうした流れはユーザー数の減少や開発費の高騰など、様々な問題への対処である。

まあ業界研究本というのは入社後などに「こんなんじゃなかった」ということにならないために、事前に読んでおく本なのでこういうことも書いてあるのだろう。
しかし隠されたメッセージとして、これからもゲームが日本の輸出産業として国際競争に負けずに生き残ってほしいという気持ちが感じられる。
だからこそ業界が直面する現状をやや厳しめの口調で書いてあるのだ。


おすすめ度

★★★★

ざっと見る限り、2010年現在でこれほどゲーム業界を簡単にまとめている本はほかにないと思う。
ただし時間が経つと内容が劣化してしまうのも避けられない。
評価はあくまでも2010年現在のものだと思ってほしい。


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