ゲーム産業で何が起こったか?  紹介・感想 --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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最終更新日 2010年7月

ゲーム産業で何が起こったか?
著者:浜村弘一

出版社:アスキー
出版年:2007年

 
紹介
著者である浜村弘一は元ファミ通編集長で日本のゲーム業界の広告塔のようになっている人物だ。
マスコミでも最新動向をうかがうときは大抵浜村が出てきている。
エンターブレインの社長となった今でもファミ通に浜村通信を連載しているが、ソニー系ハードをひいきしているのは有名である。
まあなんというか特に任天堂とファミ通の関係はティアリングサーガ裁判に関係していたこともあってか、あんまりよくない。
また姉妹紙のファミ通XBOX360とはどうも仲が悪かったり、ファミ通DS・Wiiもあることから、ファミ通本体はPS系の雑誌といえるのかもしれない。
本書はさすがに露骨なソニーよりの内容は見当たらなかった。

2007年はPS3・XBOX360・Wiiの世代とPSP・DSの両世代が出揃ってしのぎをけずっていた。
また、前世代と比べると勢力状況に大きな変化があり、ゲーム業界に新たな波が押し寄せてきていたといえる。
そんな年にゲーム業界に詳しい浜村がダイナミックに変わってゆくゲーム業界のいまをレポートした本だ。
考察よりも各国の状況やゲームの販売状況の紹介が多い。

感想
●2007年のハードウェア現状をみる資料としては面白いかも

□最も驚きが生まれたあの時

2007年は新しい世代のゲーム機がそろって勝敗がほぼ決した年である。
ゲームに関する統計データには前世代とはまったく違う傾向が現れることになった。
DSを中心とする携帯型ゲーム機の圧倒的な売れ行きと据え置きではWiiの独走・全世代覇者PS3の苦戦である。
そしてXBOX360が日本ではすずめの涙ほどしか売れていないのに比べ、アメリカでは好調に売れるという超極端なねじれ現象まで起こった。
典型的なコアユーザー層とは違う、新たな層も生まれ、かつてのゲームとはまったく違うムーブメントがおき始めている。

エンターブレインが集めた豊富な実データをもとにした現状分析はかなり説得力が高い。
意外とエコヒイキしないでどのハードも分析し、海外のゲーム動向も抑えてある。
ロシアのPCゲーム隆盛や日本のゲーム業界を壮年期と名づけているのは興味深い。
確かに日本は世界で最も早く家庭用ゲーム機が普及の限界にきた国にである。
DSが爆発的に売れ始めたのも日本が始まりだ。

□ゲーム業界のダイナミズム

日本人がもつゲームに対する考えは、世界でもっとも不可解と言える。
そこには既存のゲームに飽きてしまったという根本的な問題が存在する。
しかし、浜村通信の論調は終始楽観的だ。
むしろゲーム業界は変化して当たり前で、旧来の枠組みに当てはまらないものが生まれることを喜んでさえいる。
毎年のように勢力図に変動が起こり、新たな市場が生まれるゲーム業界を観察するだけでも面白い。
よく考えて見れば続編ばっかり出るよりも、ゲーム業界が変化して今までかつて見たこともないゲームが生まれるほうが驚きに満ちているのである。

本書の弱点は未来へ向けた予想図や統計データの鋭い分析が行われていない点にある。
情報についても時が経てば陳腐化するだろう。
数年後に2007年の状況を振り返る手助けとなるかもしれないが。


おすすめ度

★★★

ゲーム業界は常に激変している。
中でもここ数年の変化はとてつもなく激しい。
2007年の本なのでデータが古くなっているのは痛い。
鋭い考察はなく、あくまでも現状の簡単な紹介が行われているだけである。


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