横井軍平ゲーム館 紹介・感想 --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
最終更新日 2010年8月
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横井軍平ゲーム館
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著者:横井 軍平、牧野 武文
出版社:アスキー
出版年:1997年
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任天堂の玩具(ゲーム)開発の中心は現在だと宮本茂が有名だが、かつて横井軍平という人物がいた。
ファミコンでテレビゲームを世界に普及させる前の玩具時代の任天堂を支えた人物である。
また据え置きゲーム機が私たちの良く知っている任天堂であれば、ゲームボーイやバーチャルボーイという「もうひとつの任天堂」の中心にいたのも横井軍平だった。
そんな横井軍平の携わった商品について簡単な説明と、開発の回顧を行っている本である。
長らく絶版状態だったが、「横井軍平ゲーム館 RETURNS」という名前で2010年に復刊している。
中古相場で数万円という馬鹿げた金額になっていたので、待望の復刊であるだ。
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●ただ読んでいても面白い
□携わった商品の多さに驚く
まず横井軍平の企画した玩具が多いことに驚いた。
入社して最初の商品「ウルトラハンド」を開発した後は、ほぼ毎年一つか二つの商品を世の中に送り出しているのである。
しかも殆どが使い回しとかじゃなくて、ユニークなものばかり。
もちろん他社製品のコピーもあるが、ほとんどが横井軍平のアイデアが詰まったものばかりだ。
私のように任天堂と言えばゲーム会社とすり込まれている世代にとっては、昔の任天堂を垣間見れることができて興味深い。
今でも任天堂のテレビゲームは、他社と違った雰囲気をもっている。
それは玩具(おもちゃ)屋時代に横井軍平が培った空気とは無関係ではないだろう。
横井はファミコンやスーパーファミコンがもてはやされる時代にも、ゲームボーイという異質なものを生みだしている。
ニンテンドウ64で各社が最新技術を取り入れていった時代にもゲームボーイは売れ続けた。
DSやWiiにも、横井軍平の残したものは生きていると感じる。
□言葉にできないものをどう感じ取るか
本書は横井軍平が開発経緯を事細かに語っているが、やはり開発の極意について言葉にできていないものが多い。
横井自身、何かしらの直感や信念があって作ったものだとは思われる。
ただしそれは漠然としたものであって、マニュアル化できるものではない。
したがって本人が「アイディア」「枯れた技術の水平思考」と一言で済ませてしまうところもしょうがないだろう。
出来上がった製品と、わずかな回想から私たちは横井軍平の考えを読み虎案蹴ればならないのだから大変だ。
横井は「部下をどのように育てるか」について悩んでいたという。
それはゲーム(玩具)を作るために必要な暗黙知をどのように伝えるかの試行錯誤だったに違いない。
しかし任天堂には今でも脈々と横井の考えは受け継がれている。
離職率が低い任天堂は自分たちの蓄えてきたものを若い社員に伝え、世界最高のゲームメーカーとしての地位を守り続けている。
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★★★★
「枯れた技術の水平思考」を知らしめた本として有名な本である。
ゲームとは何なのかについて考えたい人ならばぜひ読んでほしい。
ただ、ノウハウとかはまったくないので、自分なりに解釈をする必要がある。