テレビゲーム風雲録  紹介・感想 --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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最終更新日 2010年5月

テレビゲーム風雲録 インベーダーからドリームキャストまで
著者:長尾 剛

出版社:文藝春秋
出版年:1999年

 
紹介
1984年から1998年まで、年ごとにトピックをたててゲームの歴史を論じている本である。
たてられた話題ごとに批評されているので単なる事実の羅列になっていないことが特徴だ。
したがって網羅的に歴史を語るのではなく、個々の題目について様々なことに結びつけながら書かれている。
例えば「スーパーマリオブラザーズ」「ダービースタリオン」「たまごっち」といった感じ。
それゆえ、平易に書かれているもののゲームに対する知識がある程度ないと読みづらいかもしれない。

また決して批判が書かれているわけではないが、著者の立ち位置というのが明確に示されている。
声高に狩猟をしなくとも大きく触れられていない話題からなんとなく類推はできる。
コアユーザーとしての視点、経営側よりも一個人としてのゲーマーの考えを生かしていると言えるだろう。

感想
●かなり面白い評論

□テレビゲームの意味するもの

本の中でも触れられているが、本書はあえて「テレビゲーム」という名前を使っている。
テレビゲームは日本で作られた和製英語である。
そこには海外ゲームへの視点がない。
「テレビゲーム風雲録」は確かに海外で話題となったゲームを排除して論が進められている。
しかしよく読んでみれば、著者が家庭用ゲーム機業界の勃興とともに一人のゲーマーとして年月を積み重ねてきた良さがある。
ストリートファイターIIの熱気を伝える大会の様子や、脱衣麻雀がゲームセンターに出てきたときの雰囲気は当時を知るものしか語り得ない良さがある。
私たちは過去の様子は映像や文献でしか知ることができないので、ついさっき見てきたような生々しい語り口には引き込まれるのだ。

そして任天堂の宮本茂が「ビデオゲーム」と言い続けていることを指摘しているのは鋭いと思う。
宮本は据え置きのファミコンのみならず、パソコンやアーケード、携帯ゲームを見ている。
だから意味が限定されてしまうテレビゲームという言葉を使わないのだろう。


□未来への投げかけが論を生き生きとする

各論の最後が未来(つまりいま読んでいる私)に問題をさらっと投げかけていることで、本の古さを感じさせないようになっている。
しかも決して的外れなものではないのだ。
最初の章「ファミコン時代がやってきた」では任天堂がファミリーコンピュータという名前の通り、家族で楽しめるものを提供していることが強調されている。
それはファミコン時代の五目並べや麻雀であったが、いまでもWiiに任天堂の思想は受け継がれている。
完全に欠落したゲーム機は大ヒットしないと述べる著者にとって、いま、XBOX360とPS3はどのように映るだろうか。
もう一つの提言はコントローラについてである。
ファミコンの十字キーの素晴らしさをほめた上で宮本茂が「キーボードを超えるインターフェイスを提供する」と息巻いていることを紹介しているのだが、これもいまのWiiやDSに完全に通じるものがある。

ほかには脱衣麻雀は脱衣要素があればこそ売れたのではなく、麻雀ゲームとして優れているからこそ売れたと結論づけていたり、ときメモをしてバーチャルリアリティが受け入れられる素地であるとしている。
つまり外見が良くても中身がダメであれば売れないという、特にゲーマー間には当たり前だが軽視されがちなことを指摘している。
ときメモに関しては、今じゃラブプラスで現実となってしまっている。

ドラゴンクエストの文芸性をもって、ドラゴンクエストの改良品に過ぎなかったファイナルファンタジーを朝日新聞の記事を引用して「シナリオが幼稚だ」と遠回しに批判しているのはどうだろうか。
ファイナルファンタジーはその後映画を爆死させ、FF12でシナリオが迷走し、FF13はシナリオが意味不明となってしまっている。
かたやドラクエはゲーム的なおもしろさを損なわないようにDQ8やDQ9を生み出している。

すでに99年の段階で表面化していた問題点を書いただけとも言えなくはないが、10年以上たったいま読んでも得るところは大きい。


□悲しきドリームキャスト

ひとつの項目はおおよそ10ページ強しかさかれていないのだが、ドリームキャストには20ページも費やされている。
本が書かれた99年当時はまだPS2もGCもXBOXも出ていなくてまさに「ドリーム」なゲーム機だったDCへの期待に満ちあふれている。
確かにドリームキャストはコンセプトこそ今では正しいと誰もが口をそろえて言う。
モデム標準搭載、WindowsをOSとして採用、ゲーム機としての性能特化は本の中でも書かれていることであるが、完膚無きにたたきのめされたPS2と比べるとDCが完全に勝っていた点である。
こうした性能を正当進化させたXBOX360がPS3よりも世界合計で売れているのを見る限り、著者のいうとおり「早すぎた」ゲーム機だったと言わざるを得ない。

しかしドリームキャストは事業戦略の失敗であえなく沈没した。
どれもがやは過ぎたためにゲーマーからしか支持を得なかったのだ。
歴史は繰り返す。
ファミリー層、ライト層を取り込めなかったハードはその世代の覇者になれないのだ。
そしてソフトでは、ストIIブームで押し寄せたライトゲーマーが消えた、2000年代以降の格闘ゲーム市場のように復活することはないだろう。


おすすめ度

★★★★

今読んでも感心させられる指摘が多い本だ。
個別のゲームレビューや出来事の羅列をした本は数多いが、いくつかのゲームを並べた評論は少ない。
(私はこういうのが将来やりたいんだけどまあそんなのはどうでもいいですね。はい)
そういう意味で希少である。

星が満点よりも一つ少ないのは、やっぱり扱う内容に少しだけ偏りがあるかなと思うところ。
時期的に厳しかったとは思うけど64の衝撃を扱ってほしかった。


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