二大RPGの分岐点 ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーの軌跡 紹介・感想 --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
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最終更新日 2010年7月

二大RPGの分岐点 ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーの軌跡
著者:岡部麒仙

出版社:講談社出版サービスセンター
出版年:2007年

 
紹介
ゲームに関する書籍はいくつか出版されてきたが、特定のタイトルについて分析的に記述した本は少なく、その意味で珍しい立ち位置にある本である。
ドラゴンクエストとファイナルファンタジーを題材に両者の差異や特徴を浮き彫りにしている。
出版されたのは2007年なので考察されているのはドラクエ8、FF10まで。
あくまでも本編のみで派生作品やリメイクについては触れられていない。
といってもDQ8の扱いの悪さとFF11は無視されている。

著者は駆け出しのライターで、本書は初めての著書となっている。
なお、この出版社が聞き慣れないのだから調べてみたところ、自費出版を行う会社らしい。

感想
●FFとDQは別のゲームである

□言葉で表現するDQ、絵で表現するFF

ワールドマップ・ストーリー・キャラクター・バトル・グラフィックについて書かれているが、おそらく一貫した視点を見いだすなら「言葉で表現するか、映像で表現するか」にある。

ドラクエはファミコンにおける性能の限界から文字の力を見いだした。
それが典型的に現れているのが戦闘である。
普通に攻撃するときも魔法や特技を使うときも使われるテキストは違っていて、それが独特の持ち味を出している。
メニュー画面は独特の言葉づかい「はなす」「どうぐ」を元にしてメニュー画面をシリーズで固定化し、ドラクエらしさを作っている。
ファミコンの頃に見いだしたお家芸を大切に守りながら、新たな発見を元手にユーザーを楽しませようと作られていた。
そうした作りが行き詰まったのはドラクエ7である。
著者も冷淡に書き記しているドラクエ7はありとあらゆるイベントと要素をファミコン様式に付け加えた結果、肥大化したゲームプレイによってドラクエ7は方向性を失うことになってしまった。
もうひとつドラクエらしさを作っていたのは鳥山明のイメージ絵だ。
ファミコンのちゃちな映像でも私たちの頭の中にドラクエと聞いて流れる映像は、パッケージなどに描かれているあの絵である。
だからこそドラクエは言葉だけの表現でもドラクエになってくれる。
とか言っていると、ドラクエ8で今までの方向性が少し変化したドラクエが生まれた。
さすがに立ち位置が難しいので本の中では多くは語られていない。

FFは初代の頃から絵を効果的に使っていた。
特にバトルについては与えたダメージや回復した数値が見た目で分かるような方向性だし、シリーズを経ても視認性についてはかなり意識して作られている。
それが顕著に表れるのが7以降のムービー路線である。
また過度な人物語りや内面描写は、FFに登場するキャラクターの「らしさ」を作ることに必要だった。
FF7のクラウドがクラウドたり得て、FF7がFF7らしいのはあの内面描写があったからこそなのである。


□実はDQ9とFF13にもあてはまっている

DQ9もFF13も過去のシリーズからは予想できた方向性で作られている。(私はDQ9をやっていないが)
このことは本書に書いてる、シリーズごとの特徴を延長したものがそのまま現れていることから明らかだ。
例えばDQは一貫したストーリー語りは行われず、ショートストーリーを紡ぎあわせたような構成になっている。
逆にFFは一本の大きな流れをキャラクターの内面から描き出していると言っても良いだろう。
既に現時点での最新作DQ9やFF13を見るまでもなく分析されていた特徴は、最新作へ見事に引き継がれている。
このような方向性は、DQ9で行われた配信クエストによって形を変えて現れている。
つまり元からミニクエスト中心のゲームだったDQにはすんなりと受け入れられたのである。

しかしFFは小さな話よりも大きな流れをプレイヤーに感じてもらう作りだったため、配信には向いていない。
大作FF13の配信なら大もうけできそうなのに、それもスクエニがやらないのはそんな理由があるからではないのだろうか。
私はミニクエストがたくさん用意されているFF13の章はそこそこ楽しんだだけで止めてしまっている。
それはやはりFFが冒険、発見をするゲームではなくなったと言えるからである。
FFとDQは同じRPGなわけでありながら別のゲームへと進化した。


□やや不満足なところ

著者はDQよりもFFを評価しているとのことだが、やや説得力がない。
FFについてはネガティブな印象を与えがちである。

最後はやや唐突なのでもう少し書き直して欲しかった。
自費出版だから仕方がないかもしれないのだけど。

本の内容は完全にネタバレ前提である。
読むときはそれなりに覚悟がいる。
とは言ってもこの本を読む人は問題ないだうけど。

オンラインゲームのFF11について何も語られていないのが残念だ。
あれを語り出すとMMORPG論になってしまうから仕方ない面もあるのだろう。
それでも一言何か添えてくれればよかった。
MMORPGをやると人生を破綻させる恐れはあってもである。


おすすめ度

★★★

やや込み入った内容になっている。
なのでファン向けである。
面白い考察が多い。


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