デジタルゲームの教科書 紹介・感想 --FF2400-- ゲームのレビュー・紹介
最終更新日 2010年9月
-
デジタルゲームの教科書
-
著者:デジタルゲームの教科書制作委員会
出版社:ソフトバンク クリエイティブ
出版年:2010年
-
デジタルゲームの教科書は17人もの執筆者によって書かれた本である。
総ページ数は500を超える。
このような本が出た理由はまえがきから引っ張ってくると以下の通り。
「日本のゲーム産業に、長く欠けていると感じられているものがあった。
その不足に対して危機感をずっと抱いていた。
それは、ゲームについての基礎情報をまとめた『教科書』である。
(中略)
しかし、過去日本では、それらの情報を、一覧的に読み通ることができる書籍が成立したことがなかった。
(中略)
この5年あまり、欧米のゲーム産業は、急成長を続けていたこともあり、多数のゲーム産業やゲーム産業に関する書籍が発売されてきている。
これらの情報が、急激に発展してきた欧米のゲーム開発者の基礎力を支えていることは間違いない。
技術だけでなく、書籍でも、着実に差をつけられている。」
つまりゲーム産業の底力を引き上げるために執筆された書籍であると言える。
-
●本の対象者には優れた本となりうる
□ゲーム業界について知る本が少ない現状
ビデオゲームの業界はメディアをはじめとして露出する割合が多い。
小さい頃からゲームに触れて育った人たちは将来なりたい職業として「ゲームクリエイター」をあげることが多いという。
これはゲームに接する機会が多いから自然と人気職になってしまうとも言えるかもしれない。
しかし同じように人気ランキングに登場する職業と比べると、ゲームクリエイターに関する実情やゲーム産業の方向性は広くは知られていない。
小学生の頃に「野球選手になりたい。ケーキ屋になりたい」と言っているのと同じように、よく考えずにただ何となくゲームが好きだから自分も作ってみたいと考えるのではないだろうか。
ビデオゲームについて真剣に考える人はほとんどいないのが現状である。
そしてビデオゲームの関する話題を扱う書籍も数が少ない。
□これからゲームについて考えたい人へも
ゲームの知識を増やす方法はほとんど体当たりである。
多くのゲームをプレイし、ニュースを広い、数少ない本を読み、ゲームに関する仕事に就いたりしなければならない。
マニュアルというのがほとんどないので、ゲームを知らない人に「ゲームのいま」を伝えることは非常に難しい。
こうしてビデオゲームに興味がない人にとっては未知なる世界が形成されていくのである。
また体当たりは効率が非常に悪く、情報の整理もつかない。
知識は蓄えていくだけでは機能しない。
蓄えたものを頭の中で並べなおし、何度も外気に触れて強くなっていって知識は使えるようになる。
『デジタルゲームの教科書』はビデオゲームに関する知識を整理するために格好の本となってくれる。
基本的な話を中心としているので、疎い分野であっても根気さえあれば読み通すことができる程度の内容である。
そして扱われている情報は極めて広く、国内だけの狭い視点に囚われないように書かれている。
これからは日本だけでなく世界のゲーム市場を視野にいれてゲームを開発しなければならなくなっている。
そういうわけで未来のクリエイターや、これからのクリエイターに向けて書かれている本だとは言える。
ゲームについて知識を蓄えることで自分なりに考える素地のようなものを作るために使えるだろう。
-
★★★★
娯楽としてゲームを楽しみたい人には不要な本だと思う。
コンセプトには賛同するし、本として世の中に出たことは喜ばしい。
この本を「こんなもの」と踏み台にする人がいたら、ゲームの未来について考えない人である。