RPGにおけるシナリオの分岐と一方通行シナリオ

今回はRPGの典型的な手法について日本ファルコムの例を出して考えます。引き合いに出すのは英雄伝説シリーズの『III』~『VI(空の軌跡)』です。

ファルコムの英雄伝説シリーズ『III 白き魔女(しろきまじょ)』『IV 朱紅い雫(あかいしずく)』『V 海の檻歌(うみのおりうた)』はガガーブトリロジーといわれる一連の物語を成しています。しかし『朱紅い雫』には二つのバージョンが存在します。ひとつはPC-98とPSで発売された旧『朱紅い雫』、もうひとつはWindowsとPSPで発売された新『朱紅い雫』です。旧『朱紅い雫』は厳密にはトリロジーに含めにくいと思われます。後にリメイクされた新『朱紅い雫』は間違いなくガガーブトリロジーです。

発売された時系列は『白き魔女』(1994)→旧『朱紅い雫』(1996)→『海の檻歌』(1999)→新『朱紅い雫』(2000)です。もともとは『VI』と呼ばれていた『空の軌跡 FC』は2004年に発売されました。

『白き魔女』と旧『朱紅い雫』の違い

『白き魔女』が発売されたのは1994年。その2年後の1996年に旧『朱紅い雫』は発売されました。旧『朱紅い雫』は『白き魔女』を丁寧に反省して作ったゲームです。そのことをこの項目でお話します。

RPGとして類がないほど『白き魔女』は一方通行のゲームです。主人公二人は生まれ育った村から旅に出ますが、プレイヤーは立ち寄った村や町には自由に戻れません。シナリオの進むがままに任せて次の町へ行ったり、元来た道を戻ったりするのみです。しかし次から次へとミニストーリーが展開するので自由度の低さはあまり気になりません。

戦闘についてもやはり一方通行のゲームです。無理矢理レベルを上げることはできますが、基本的にレベル上げの必要はあまりありません。
武器や魔法は必要最低限のものだけが用意されています。セガサターンに移植された『白き魔女』はこのようなシステムを更におしすすめた結果、戦闘すらもイベント化し、まるでアドベンチャーゲームのようになっています。

『白き魔女』方式のリニアなゲームは、プレイヤーが寄り道をできなくさせてしまう欠点がある反面、ゲーム側でイベントの厚みを持たせることができます。難易度の調整もやりやすく、バランスを破滅させにくいのも利点でしょう。RPGに限った話ではなく、アクションゲームやシューティングゲームでも演出重視のゲームは一方通行に作られていますね。

○『白き魔女』のゲーム進行を図示すると以下のようになります。

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旧『朱紅い雫』は『白き魔女』の窮屈さを反面教師にして、比較的自由なゲームプレイを目指して作られました。まずゲーム開始早々にキャラクターメイキングがあります。選択肢によって主人公の能力や魔法の種類が変化します。そしてエンディングを見るために必要なメインシナリオの他に、クリアしてもしなくてもよいフリーシナリオが幾つも用意されています。仲間キャラクターについても、9人いるキャラクターの中から2人のメンバーを選んで同行させることができます。

そのおかげで旧『朱紅い雫』は冒険している感じをうまく演出できています。主人公がフリーシナリオで仕事を請け負って、山深くにある洞窟へ探検に行き、クエストを遂行する。勝手気ままに彷徨うのもよし、仕事をこなすのもよし、街道に隠されたアイテムを探すのもよし、です。戦闘については仲間が多様なので戦略を組み立てるのも楽しく、主人公の能力が可変なのでクリア後の再プレイへの動機もあります。

しかし、自由な遊び方ができる反面、欠点もいくつかあります。シナリオがどれも似たり寄ったりで深みがありません。仕事を請け負っても洞窟の奥にいる敵と二・三会話があるだけのシナリオの多さったら。ゲームバランスも適切ではありません。強すぎる攻撃魔法、使えない精霊魔法、使い道が難しい一部味方キャラの存在・・・等。実は『白き魔女』もちょうど良いバランスだったとは言い切れないのですが、旧『朱紅い雫』ほどのなんでもありではありません。

旧『朱紅い雫』のような分岐が多いゲームはプレイヤーによってそれぞれ異なるゲーム体験をさせるのに適しています。しかしひとつの話を深く掘り下げにくいため、どうしてもサブリナリオが薄い話ばかりの蛇足になってしまいがちです。ちょうどよい難しさに設定するのも至難の業だと思われます。

○旧『朱紅い雫』のゲーム進行を図示すると以下のようになります。
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旧『朱紅い雫』と新『朱紅い雫』の違い。そして『空の軌跡』との関係

旧『朱紅い雫』から4年、新『朱紅い雫』が発売されました。リメイクです。リメイクされるに当たって色々な変更点があるのですが、最大の変更点はやはりフリーシナリオの取り扱いでしょう。フリーシナリオは撤廃され、完全な一方通行ゲームに生まれ変わりました。
話の展開も『白き魔女』のようなものになり、ガガーブトリロジーとしての統一感が出ています。ちなみに『英雄伝説V 海の檻歌』も『白き魔女』と同じようなコンセプトのゲームです。つまりガガーブトリロジーは「一方通行シナリオのストーリー重視ゲーム」なのです。

さてトリロジーとは全く異なる世界・設定で新たに作られた『空の軌跡』シリーズ。これはどうだったのでしょうか。結論から言うと「一方通行シナリオのゲームにフリーシナリオが折衷されたゲーム」です。旧『朱紅い雫』でいうフリーシナリオがブレイサークエストと名前を変えて復活しています。密度の高い話の骨幹を維持したまま自由度を高め、戦闘を楽しませようとするなら、そういった方向になるのは当然のことなのかもしれません。

次なるRPGの手法はいかに?(結論は出ない)

今まで見てきたRPGの手法は「一方通行」と「一方通行に分岐点を追加したもの」の二つでした。

『空の軌跡』は良くできたゲームですが、さて、次なるゲームはどうなっていくのでしょうか。その前にもうひとつの方向性を見てみましょう。「メインシナリオすら存在しない、すべてが選択できるもの」です。代表作はTESシリーズであったり、MMORPGでよく使われている方法です。

○全てがサブシナリオのゲーム進行を図示すると以下のようになります。
このようなゲームは膨大な選択肢を
選ぶ楽しさはあるものの、どうしてもショートストーリーの連続にしかなりません

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「一方通行」はかつて岡田斗司夫が『東大オタク学講座』で述べたように、テキスト中心のアドベンチャーゲームやアニメや小説の発展版でしかありません。まず小説のように話を作り、その時々で主人公の前に立ちふさがる壁や山場を描きます。壁や山場を戦闘シーン(=ボス戦)に置き換えればRPGになるというのです。一部のRPGにおけるストーリーテリングの本質をついていると思います。
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「一方通行に分岐点を追加したもの」はRPGのみならず現在考え得る多くのゲームで使われています。確かに寄り道できることがビデオゲームらしさを演出してはいます。しかしあまりにありがちな要素で飽きてきませんか?分岐点についてもメインシナリオを脅かすほどのボリュームがあるわけでもなく、ただの「お使い」「小話」になっていることが多くありませんか?
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さんざん引っ張っておいて何言ってるの、という感じですけれど、新たなRPGの手法についての明確な答えはいまのところありません。強いて言えばオンラインゲーム化によって物語や戦闘が再生産されていくようにするのが最新の手法ではあります。ただしなんでもかんでもオンライン化すれば良いわけではありませんね。それはオンラインゲームをやってみればわかります。ライターが丹精込めて作り上げた物語を楽しめるわけではありませんから。

○再生産されていくゲーム進行を図示すると以下のようになります。
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