【書評】武田隆『ソーシャルメディア進化論』

武田隆『ソーシャルメディア進化論』 ダイヤモンド社

本の内容を紹介

前半はソーシャルメディアの分析。後半は具体的な業務の話がされています。

ソーシャルメディアとはオンラインコミュニティのことです。オンラインの匿名掲示板(2ch等)に始まり、mixi等のSNS、昨今ではツイッターが代表例ですね。『ソーシャルメディア進化論』は前半部分でそのようなソーシャルメディアの特徴を、インターネットの広がりとともに歴史的経緯から書き起こしています。そして既存のソーシャルメディアに足りない物は何かをあぶりだし、次に解決策を提示する。
解決策として登場するのが企業コミュニティです。平たく言うと、今までのソーシャルメディアに足りなかった物は「コミュニティ作り」でした。誰でも気軽に参加でき、匿名性を失わずに、それでいて社会とつながっている状況を作ることは難しかった。だから企業が率先して場所をつくる(企業コミュニティを作る)ことが大事だ、と著者は指摘しているのです。旧来のソーシャルメディアの何がダメなのかは詳しくは本を読んでください。
で、ここから後半部分が本の主題だとは思います。企業の目的「利益追求」とソーシャルメディアの目的「場所の提供」をどうやって両立させるのかが非常に難しい問題として立ちふさがりますからね。ここで著者はどちらも両立させなければ、ソーシャルメディアの未来はないと言いきっています。インターネットの未来を提示しているといえるでしょう。そして後に著者のビジョンに基づく考察や実例がずっと続きます。本の後半は実際の業務に関係する事柄が多く、このあたりは私が興味なくて読み飛ばしてしまったため、これ以上の言及は避けます。

内容はおおまかにいうとこんな感じ。

我田引水の感想

さて。この本は十数年にも及ぶ多大な実績をもとにして書かれているためか、論点が多岐にわたっています。読んでいると何から話せばいいのかわからなくなってくる(言い方をきつくすれば、文章構成にまとまりがない、とも)。というわけで、思いっきり〈我田引水〉をいたします。

私が頷いたのは以下の二点。まあ普通の話題かもしれないけれど。
1.ほったらかしにするだけではコミュニティは成長しない。後押しが必要だ
2.インターネットは個人の力を生かす。個人の力は組織を伝わって社会全体に波及する

「1」については『龍が如く』で有名な名越さんの発言を本からひくと分かりやすいと思う。私がビデオゲームのレビューでしつこく指摘する事柄にも関係しています。

ゲームの設定と言うのはね、何でも自由にできるようにすればプレイヤーが自由を感じるかと言うとそうじゃない。決められた設定、役割を与えて、ちゃんとルールをつくる。そのなかでプレイヤーに選択肢を与えることが大事だ。このバランスが上手につくれたときに、初めて自由を感じてもらえる

著者の武田隆さんも企業コミュニティに当てはまると書いている。自由を他の言葉に言い換えてみれば色々と応用できる。

「2」は個人的な印象も含めて実感しています。

消費のスタイルが画一化から個別化にむかっているとは度々いわれています。同じ事はコミュニケーションにも当てはまるわけですね。自分の住む村の情報しか得られなかった江戸や明治の時代から、マスな情報が瞬時に行き渡る昭和の時代へと時代はかわったものの、今はまた個別化へと向かっている。みんなで共有していた情報から、僕らだけの情報が価値をもつ時代へと変わってきています。

しかもインターネットというネットワークが個別化をどんどん推し進めている。もちろんマスの力は未だに侮れませんし、ほとんどの情報源はマスコミではあります。ですが、私たちにとってマスよりもミクロな世界、繰り返しせば「私であればこその関係、情報、つながり」は今また重要性を増してきている。ツイッターなどを介して、いわゆる有名人との距離も近くなった。

若干の批評

ただまあ、かなり楽観的に見過ぎだとは思います。たとえば著者はオンラインゲームの廃人を肉体軽視、現実逃避の「繭化(コクーン化)」と命名し、好意的に見てはいません。ところが著者の見るところの未来である企業コミュニティにしたって、オンライン上にしか存在しない組織です。現実の生活があって意味を為すような企業コミュニティを作っているのかもしれませんが、やはりリアル世界との差は著者のビジョンでも大きく存在しています。

インターネットの世界にいると勘違いしがちなことがあるんです。どうしても「世界のすべてがある」と錯覚してしまいがちなのです。これについては著者も従来のソーシャルメディアへ批判として指摘してはいます。しかしインターネット世界とリアル世界だって成り立つ。ネットに接続していない人をどうやって、〈こちらがわの世界〉に引きずり込むのか、は本書には書かれていない。ここについてはまだまだ預かり知らぬところなののかもしれません。
(追記)
かなりボリュームがあって、見るたびに新たな発見がありそうなタイプの本。ソーシャルメディア(2chでも、Twitterでも)の行方を考えたい人にはお勧めできると思う。答えは自分で考え、見るしかないけれどね。

予定など

久しぶりの更新。ゲームをやる気力がなかなか見いだせず、ツイッターで細々と書いているうちにブログやウェブサイトの更新が億劫になってしまった次第です。

 

一ヶ月ほど使ってみて、ツイッターとブログの棲み分け方を決めました。

ツイッターではニュースや備忘録のようなものをつぶやく。

そしてブログにまとめなおす。

最後にウェブサイトへ論考を載せる。

 

こういうスタイルでやっていこうと思います。

8月は『TERA』を中心にやっていく予定です。『TERA』にあきたらもういちどTPSやFPSの世界へと戻ります。

 

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それと、コラムについてかなり書き直す予定です。9月は比較的時間が取れそうです。

古いゲームレビューも徐々に改稿していきます。遅くなって申し訳ない。