ソーシャルゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ』について

 ソシャゲはクソゲー? 

今回は『アイドルマスター シンデレラガールズ』というソーシャルゲームについて話をします。ソシャゲはゲームなのかどうか、クソゲーだろうか、そういった方面で語られることは多いのですけれども、この記事ではゲームの一種として扱っていきます。

まずはソシャゲの仕組みをおおまかに説明しましょう。ソシャゲの形式には数多くあれど主流は「カードを育てて戦わせる」カードゲームのようなものです。数多くのカードがあり、そのカードごとに強さが決まっていて、レベルを上げることで更に強くなる、そいった具合です。ただしゲームのルールはいたって単純に作られており、トレーディングカードゲームのような複雑な効果はありません。逆に言えば戦略性皆無のトレーディングカードゲームと表現できるでしょう。

ということはトレーディングカードゲーム的な面白さがソーシャルゲームにはあるのです。トレーディングカードゲームの面白さは大別すると「ゲームで遊ぶ戦略性」と「カードを集める楽しみ」のふたつあります。ソシャゲに戦略性はありませんから、「カードを集める楽しみ」が少なからず受け継がれていると言えます。

 自慢する、という行為 その1 

ではカードを集めてどうするのでしょうか。トレーディングカードゲームをやっていた方はわかると思いますが、カードにはレアリティというものがあります。つまり封入率が低いレアカード(珍しいカード)と、封入率が高いカード(コモンとかノーマルと世呼ばれるカード)が混在しているのです。そこで、例えばレアなカードを引き当てて喜んだり、友人などにレアなカードを見せて自慢したりするわけです。

レアカードは能力や効果が強く設定されていたりあるいはデザインが独特なものであったりするわけで、自慢するだけでなく実用価値さえ出ます。もし実用価値がでてくればカードゲームを遊んでいる人はこぞって手に入れようとします。するとどうなるでしょうか。カードを取引する市場において、レアカードの需要があがり、さらにレアカードの価格(=価値)はあがります。価値が高いカードというのは市場において供給量が少ないことを意味しますから、珍しいレアカードが更に珍しくなってしまうのです。となると、他人に自慢しがいがあるというものです。

トレーディングカードゲームの販売会社はこういった構造の商品を定期的に売り出し、新たなレアカードを生み出します。カード愛好者は新しく発売されたレアカードをこぞって手に入れようとするわけです。新しいカードというのはいわば、他の誰も手に入れてない超レアなカードですよね。相対的にレアリティがものすごくたかくなっているわけです。

ソーシャルゲームにおいても同じような構造になっています。大量に排出されるカードは弱くて実用価値はありません。一方でレアリティが高いカードは強く、またデザインも秀逸なものになっています。そして新しく追加されたレアなカードをいち早く自分が装着すれば、他人への自慢となるのです。

 自慢する、という行為 その2 

ところでソーシャルゲーム独特の自慢行為がもうひとつあります。むしろこっちのほうが重要です。アイテム課金型オンラインゲームにもいくらか共通する要素と言っていいでしょうか。それが「重課金者への羨望」です。

レアなカードは高いリアルマネーで取引されているからヘビーユーザーはすごいといわれる、のではありません。ソーシャルゲームやアイテム課金型オンラインゲームでは、「ゲームの進行を有利にするためのアイテム」が販売されています。そして重課金者は「ゲームの進行を有利にするためのアイテム」を無尽蔵に使っているように他のユーザーからは見えるのです。ここに一種の羨望が生まれます。あまりお金をかけていないプレイヤーが群がっても敵いっこないほどの成績を一人で出すプレイヤーに、多くの人の目注がれるのです。ゲーム側でもトップランカー(トッププレイヤーのこと)やランナー(無尽蔵にアイテムを使うさまを「走る」と形容する)の存在がバッチリとわかるように工夫されています。

もちろんお金を大量につぎ込んでいる人を見て「あれは馬鹿だな」と嘲笑するむきもあるでしょう。が、私がアイテム課金ゲームやソーシャルゲームをやった限りではそういう意見をあまり見かけません。むしろ「アホやな~」と生活を心配しながら褒めている人が多く見られます。お金を使いすぎた人も「自虐ネタ」として笑い飛ばしたりすることもよくあります。

ともかく。ランナーや廃プレイヤーになることは一種の快感を伴います。他人からの視線はプレッシャーにもなり得ますが、病み付きにもなってしまうのです。

 一押しユニット・アイドルのアピール 

ここからはソーシャルゲーム一般ではなく、焦点を『アイドルマスター シンデレラガールズ』に絞っていきます。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』はごく普通のソーシャルゲームのシステムを使っています。アイドルを手に入れ、育て、バトルさせていくだけです。ゲームとしてはなんの変わったところもないと言えます。

しかし使われているキャラクター達の良さが他のゲームとは異なっています。統一感のある絵柄に加えてアイドルの種類が豊富で、同じようなキャラクターがいません(実際は多少なりともいる)。割と健全に描かれてもいます。まあ要するにかわいく作られているのです。

であるからプレイヤーとしては、能力値の高いアイドルを他人にみせようとすることもありますが、自分の一押ししているアイドルをわざわざ他人にみえるような位置にもってくることも多くなるのです。つまりレアでなくても自分がプロデュースしたかったり他の人に知ってもらいたい場合、わざわざリーダーとするのです。そして一押しアイドルが例えば新カードとして追加されたとき、もちろんプレイヤーは新しい一押しアイドルを手に入れてリーダーにしたり、他人と話題にするわけです。とくにレアリティが高いアイドルが追加されたときに一押しアイドルを誰よりも早く手に入れれば、「さすがです」「おめでとう」など、反応があったりします。特に上位ランカーはそれが顕著です。

ではなぜこんなことになっているのかというと、元のゲームである『アイドルマスター』が多いに関係していると思われます。つまりアイドルマスターの世界を壊さないようにキャラクターが作らていく。ユーザーもアイドルをプロデュースする立場ですので、お気に入りのアイドルやユニットを「押す」わけです。単純に戦闘を行って上位を目指していくゲームの体裁をかぶってはいますが、その中身は最初から「好きなキャラクターを愛でるゲーム」でもあったのです。

 キャラ付け・物語をたのしむ 

もうひとつはキャラ付けの重要性を指摘しておきましょう。現在のトレーディングカードでは当たり前のようにキャラ付けを行い、裏では物語のようなものを暗示させています。しかし昔からそうだったわけではありません。かつては野球選手などの有名人を扱ってキャラ付けは行われてはいましたが、物語世界まで作るようなことはありませんでした。そんな中、1985年にトレーディングカードのビックリマンが「悪魔VS天使」のシリーズを売り出します。このシリーズは独特の設定を持ち込んで物語性を押し出し、更には先ほど述べたレアリティの操作を加えて大ヒットとなりました。ここからわかるとおり、現在のトレーディングカード形式のものはキャラ付けと物語性がヒットに不可欠なものとなっています。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』も「キャラ付けと物語性」をきちんとなぞっています。キャラ付けについては100人以上のアイドルがかぶらない属性をもっている点を指摘できます。では物語性はどうでしょうか。実は『アイドルマスター シンデレラガールズ』内での物語は登場人物の台詞が成長をしていくこと除きあまり語られていません。ではどこにあるのでしょうか。これは物語というよりももっと大きな、アイドルマスターの世界に関係しています。『アイドルマスター』はプレイヤーがアイドルをプロデュースするというゲームでした。『アイドルマスター シンデレラガールズ』でも同じようにアイドルをプロデュースします。つまりどのような世界になっているかは、すでに、原作ゲームで作られていたのです。であるから『アイドルマスター シンデレラガールズ』の世界が語られることはあまりありません。原作ゲームと同じだからです。

 二次創作の楽しさ 

『アイドルマスター』はゲームの魅力もさることながら、二次創作によってブームとなりました。とりわけニコニコ動画を中心にしてブームが起こり、二次創作界隈は大いににぎわったといえるでしょう。

では『アイドルマスター シンデレラガールズ』はどうなのでしょうか。ニコニコ動画ではあまり人気があるとはいえませんが、ピクシブは大いににぎわっていますし、2ちゃんねるのスレッドはとてつもない速度で書き込みが行われています。「ゲームやるより語るほうが面白い」とはよくいったものです。そしてピクシブや2ちゃんねるで語られた話題がいつのまにか公式に悪影響を及ぼし、新しいカードのせりふや設定にうっすらと反映されることがあります。

こういった二次創作の活発さやゲームを語ることへの間口の低さ、あるいは良きにつけ悪しきにつけ二次創作から本編への影響があるというのは何も『アイドルマスター シンデレラガールズ』だけではなく、そもそも『アイドルマスター』から受け継がれてきた性質です。

 終わりに・・・ 

以上見てきたことを整理してみましょう。ソーシャルゲームはビックリマンといったトレーディングカード遊びのような収集の面白さがあります。そして集めたカードを見せたり、ゲーム内のイベントで有料アイテムをがんがん使うことで他人に自慢することができます。このような自慢から生まれた快感はアイテム課金オンラインゲームでも見られる要素でした。そして『シンデレラガールズ』は他人と戦うだけではなく、アイドルを愛で、みんなで語り合い、二次創作も時として行うという『アイドルマスター』時代からの特徴ももっています。

ということはソーシャルゲーム(『シンデレラガールズ』)はよくよくたどってみるといろいろなものの集合体であることがわかるとおもいます。

 

ではソシャゲの大元はなんなのでしょうか?Mob WarsやMafia Warsが原点だと思われます。詳しくは4gamerの記事を参照してください。http://www.4gamer.net/games/085/G008544/20100205058/

読んでみれば、誰でも持っているような機器を介したオンラインを前提とし、ある程度コミュニティが出来上がっているところに、毎日接続させるようなゲームシステムを盛り込んだものがソーシャルゲームの本流だというのがよくわかると思います。